ららら科学の子

ららら科學の子

 学生運動家が逃げる途中で機動隊に金庫を投げつけ、殺人未遂になった男が中国へ逃げ、中国で生活していたが、30年ぶりに日本に戻り、自分をとりもどしつつ、別れた妹を探すという話です。
 学生運動や、左翼の歴史、そして中国の近代を巡りながら、現在の日本を見つめて、自分が何をしなかければならないかを問い、答を出します。小説の中で主人公が成長しながら(それがオヤジであっても)自分なりの答えを見つけるという、小説の王道のような話でも、左翼運動と近衛兵、蛇頭や中国の貧しい農村、そして日本での女子高生、親友のやくざ、経済と風俗と並べるとプロトタイプでも、しっかりと構成されていて、読むものを飽きささない魅力がありました。鉄腕アトムをなぞらえながら、「おれたち科学の子だったんだ」とマルクス主義を振り返る主人公が、自分の自我を見つけることが、大なり小なり彼らの世代がおこなった転向を、ダイジェストに提示してそれなりの意味をみいだしているのでしょうか?