だみ声は、ルーツミュージックを掘り下げる 5 ウは牛心隊長のウ

 古代は、理知や知性のない時代だからこそ古代であり、原初的エネルギーの渦巻くプリミティブでアナーキーなものだったというのは、多分ガセで、本当は秩序がスゴく大事な世界で知性や理知が今よりも尊敬された時代だったと思うのです。だからこそ思う時に、思い通りに原初的エネルギーが最大限に引き出せたのでは無いでしょうか?
 クロード・レヴィ・ストロースの本の中に書いてありそうな言い方を書いてしまいましたが、キャプテン・ビーフハートの音楽を聴くと、身体能力から出る、オーラのようなプリミティブというより、例えば、どんな風に割れるかわかっていてからカメの甲羅を焼いて割ったりする、星を見て明日の戦いを知り占うような、理知的プリミティブに思えるのです。音楽のフォーマットは、実は単純なブルースで、複雑な音楽形態やコード進行よりも、隊長の声を支えるミュージシャンの腕が絶対必要だったので、聴くと難解に思えるのだろうけれど、ブルースをある力学で凝縮した、シンプルな音楽だと思うと、良く言われる「何がしたいのかわからない音楽」とか「アバンギャルドの極地」とかいう言葉で、壁を作ったり難しげな言葉で覆ったりしなくて済むと思うのです。
 隊長はいつもテープレコーダーを持ちあるいていて、コーヒーショップでもどこでも辺り構わずあの声で歌を吹き込みまくり、「ベリャフニャビィヨーン?」とかをバンドメンバーに聴かせて「これをコピーをしろ」と迫ったそう、とっても迷惑な人ですが、奇妙なユニゾンで鳴るギターの音も元は隊長の歌なんだなと納得すると、難解きわまりないと多くの人が嫌悪する、トラウト・レプリカ・マスクも聴きやすくなるかも、
 今日は、比較的わかりやすいと言われるファーストですが、あなた1967年ですよ。その音世界のすごさや、全然古くない音楽的エッセンスが何時聴いても驚き、ジョンスペ好きなら、キャプテン・ビーフハートを聴け!!
Safe As Milk