ルールズ・オブ・アトラクション

 作家というのは、重大な問題を問題提起することが使命のように感じているように、僕等は思っていますが、ブレッド・イーサン・エリスの冷めた目は、「こんなのは、つまらない」という一言を言うためだけに小説を書いているのです。小説の技法は沢山、駆使し、ポリフォニーに成功していますが、結局、主人公に感情移入する事だけは、最後迄出来ません。
 この、どうしようもないセックスと恋愛ゴッコの羅列を読んでいると、いくども「もう読めない」と思いますが、何故だか熱望する期待の時間が持続持続しているのを感じて最後迄読んでしまいます。あまりにもくだらない、そして、何も生みださない時間に、意味を持たせようとするのは徒労に終わるのでしょうが、この小説が持っているスタイルと流れる気分と感覚だけで小説として成功し、物語が作れてしまうという、文学の持つ本質的な罪深さを感じます。大江健三郎の小説のように「ひりつくような期待」をこの小説で見てしまいました。
ルールズ・オブ・アトラクション