柳沢桂子
彼女の般若心経の現代語訳は、僕には、誰の解説よりも何故か馴染みの深いものでした。四国では、空海のおかげで、真言宗多いのですが、かくいう僕の実家も真言宗です。般若心経は法事の度、唱えていて子供の頃にもう暗記してしまったくらいなのですが、内容はとても難しくて意味がよくわからなかったのですが、宮沢賢治の詩や木田元の解説等で悟りを促す内容を少しだけ理解したような気になっていたのですが、それは単語の意味を少しだけ知っているというだけに過ぎなかったのかもしれません。
概念としては、全ては空、物質は分子そして原子になり、エネルギーでしかないという素粒子論に似た概念を認識する事によって人間の欲望煩悩を執着を捨て去り、涅槃に到達する。つまり悟りを開くことに繋がるのです。簡単に書きすぎていますが、そういう理解が成り立ちます。
柳沢桂子は、間断なく繰り返される痛み、誤診と家族までも理解されない苦しみから、安楽死、つまり自殺を選ぼうとします。しかし、信仰から思いとどまり今に至るのです。
宗教を信仰することは、現代では、難しいのかもしれません。そして、信仰に意味があるのか、
僕などでは答えることすら出来ません。
でも、この本の中には少しだけその答えが隠されているような気がするのです。